人生に必要なものを学んだ、ヨルダンでの出会い

人が認知できる世界なんて、

たかがしれている。

そんなことを教えてくれた、

かけがえのない体験。

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この写真をみた誰もが、

この中のどこかで、

ひたすら柔道に励み、

汗を流す若者達が存在するなんて、

想像できないと思う。

僕自身もそうだった。

ヨルダン南部の田舎町に、

新興の柔道クラブがある。

そんなウワサを聞いたのは、

赴任して3、4週間たった頃。

そろそろ所属先に配属されるというタイミング。

どんな活動ができるのかを模索しながら、

赴任先に顔を出して、

ヨルダンの柔道事情を調査していた。

そんな時に仕入れた情報だ。

赴任後すぐに、

この新興クラブを訪問するチャンスを得た。

まだアラビア語もままならない、

初めての一人旅。

首都から乗り合いバスに揺られること約4時間。

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車窓から見える景色は、

緑は消え、

見渡す限りの土漠。

家もまばら。

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いくつかの丘と谷をこえ、

見慣れない景色の先に、

町が見えてきた。

迎えに来てくれたのは、

その後の活動を支えてくれるパートナーとなる

スレイマン先生。

僕のアラブ、イスラムに対する

浅はかな考えを根底から覆してくれた、

兄弟のような存在となる人だ。
 
 

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僕を見つけた時の、

彼の満面の笑みは、

一生忘れることはないだろう。

固い握手。

お互いの頬を重ね合わせるアラブ独特の挨拶。

歓迎してくれていることがわかって、

一安心した。

なんでも、彼も数年前まで

ナショナルチームの選手で、

日本にも選手としてきたことがあるとのことだった。

引退し、故郷で柔道クラブを立ち上げたのだそうだ。

彼のお世辞にも快適とは言えない運転に揺られ、

目的地の柔道場に向かう。

ただでさえ、

見たことのないような田舎の風景なのに、

どんどん家が少なくなっていく。

次第に渓谷が見えてきた。

しかも、日も暮れ始めてきている。

 

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俺はもしかして、

やばいところに来てしまったのかもしれない・・・。

このまま変なところに連れて行かれたらどうしよう。

気弱にならなかったと言ったら嘘になる。

ちょっと、
いや、 か な り 不安だった。

そんな感情とは関係なく、車は進む。

町のような、集落のような、

一帯に入った。

そして、車は止まる。

東の果てからきた僕にとって、

あまりに辺鄙で、

アラブの片隅としか思えないような場所。

近くの建物から、

「いち、にー、さん、しー」

片言の日本語とともに、

どすん、どすんと

鈍く聞き慣れた音が聞こえてきた。

なんだろう、この音は!?

耳を疑った。

言われるままに後についていき、

声のした建物の中に入ると、

その光景に、
ただ驚くしかなかった。

くすんだ色の柔道着に身を包んだ少年達が

僕の到着と同時に、

狭い室内に整列した。

そして、

「せんせいに、れい!」

僕に向かって頭をさげ、挨拶をしてくれた。

その挨拶のすぐ後、

彼らは準備体操に戻った。

あの瞬間に感じた気持ちを、

言葉に表すことはとうてい不可能だ。

 

練習後選手たちと

 

衝撃だった。

にわかには信じられない光景。

柔道は、こんなアラブの片隅にも
息づいていた。

世界は広い。

しかし、狭くもあるのかもしれない。

日本で生まれた柔道が、
海を越え、
多くの志ある先輩の手によって、
このヨルダンに伝えられ、
そして、その教え子が、
自らの故郷で発展させている。

時を超えた、
志のリレー。

体験を伴った学びしか、
心には残らない。

今日も、今この瞬間にも、
僕らが見たことも、
聞いたこともないどこかの地で、

日本で生まれた柔道が、
誰かによって伝えられ、

そこで汗を流す人々がいる。

そう考えると、
僕たちは、

時間を超え、
距離を超え、

何かを介して、
同じ価値観を共有できるのかもしれないと
思えなくはないだろうか?

衝撃的な出会いの後、
柔道着に着替えて、

彼らと汗をかいた。

お世辞にもうまいとは言えない。

しかし、はじめてみる
自分よりも体の大きな東洋人に、
ひるまず立ち向かってくる姿勢は、
清々しかった。

違いを超える為に、
言葉は必要ないのかもしれない。

共有できる何かがあれば、
そこに言葉はいらない。

この経験から学んだことは、

自分の認知していること、
見えていることが全てではないということだ。

知りもしない、
想像もできない世界が、
まだ広がっている。

その扉を開くのは、

感性と好奇心だと思う。

そして、その感性と好奇心に従って行動する、

ちょっとした勇気。

現在は道場がリニューアルされ、
教え子も指導に加わっているようだ。

自分が去った後も、
発展していることが何より嬉しい。

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(2012年訪問時に撮影)
ちなみに、中央に筆者がいます。
見つけられますか?

 

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